アウシュビッツに投獄された精神科医のアウシュビッツで何が行われたかではなくあの凄惨な生活の中で精神科医として客観的に人間の心理を捉えた小説「夜と霧」に引き続き、「等伯」という時代小説は私のお薦めの本です。
戦国の世を様々な人の死を乗り越え狩野派を凌ぐ絵師となる等伯の物語。
表現者の産みの苦しみ、感性、無の境地の会得。凄まじいまでの努力は数々の人の犠牲が支えとなり不動の地位を築き上げる。波乱の時代であったからこそ、生まれいづる芸術であったのかもしれない。信長、バテレン、秀吉、利休、朝鮮出兵、松浦鎮信などの因果関係が解き明かされるのも魅力。いつの時代にも政争の具に利権が利用されるもの。しかし、この平和な現代においてはたかだか自民か民主の陣取り合戦。血が流れるわけでもなく文化財が焼失させられるわけでもない。つくづくいい時代に生きているものだ。

松林図屏風 長谷川等伯

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